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言葉で全てを規定できますか?

2005年10月16日

宇佐美 保

 郵政民営化に反対して、今回の衆議院選挙の際、自民党公認を外された八代英太氏の

“私は自民党を愛しています”

との選挙民よりも自民党を愛しているごとき発言に呆れ、又、その選挙結果に呆れ、更には、大見得切って反対票を投じた議員の変節振りに呆れ返り、こんな世の中で、私如きが、何を書こうと無駄なこと!と、すっかり疲れ果ててしまいました。

 

 でも、やはりある種の義務感から、少しでも書き続けなくてはと我が身に言い聞かせているところです。

 

 なにしろ、民主党は選挙に敗れた結果、党の代表に小泉首相が喜ぶ前原誠司氏がおさまったのですから。

この件に関して、朝日新聞(1012日)を引用させて頂きます。

 

 自民党の武部勤幹事長は12日、東京都内のホテルで講演し、民主党の前原代表があいさつに訪れた際、小泉首相が「あなたたちなら今すぐにでも小泉内閣に入れる。一緒にやろうじゃないか」との「ジョーク」を言っていた——というエピソードを披露した。

 

 そして、その前原代表は、次のような発言をしているのです。

(東京新聞(927日)より)

 

「(陸海空軍の不保持を定めた)二項を削除して自衛権を明記する。九条改憲論者は、タカ派で好戦派というレッテルを張るのはナンセンスだ。

『読んで字のごとく』の憲法に直すべきだ

 

 この前原氏の“『読んで字のごとく』の憲法”など存在するのでしょうか!?

文言が(特に日本語が)事象の全てを表現し尽す事が出来るのでしょうか!?

 

 例えば次の記事も読んで下さい。

(朝日新聞:1015日)

 

 小泉首相は14日、自民党新憲法起草委員会委員長の森喜朗前首相と同委事務総長の与謝野馨政調会長らと首相官邸で会談し、党新憲法草案の9条2項に、自衛軍の保持と国際協調活動を行うことを盛り込む方針を了承した。また、会談では9条1項の戦争放棄の理念を維持することで一致した。森氏らが明らかにした。

 会談では、28日に公表する予定の草案の概要を党側が報告。このうち、条文案の最終調整が続いている安全保障分野について、森氏らが「9条1項の理念は変えない。2項については自衛軍の保持と、国際協調活動を行うことを盛り込むことを軸に検討する」との方針を示したのに対し、首相は「その方向でやってほしい」と述べたという。

 

 おかしくはありませんか?

日本の憲法の第九条第一項は次のように記述されています。

 

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する

 

そして、森氏は、この「9条1項の理念は変えない」と述べているのです。

なのに、何故、「自衛軍の保持」が必要なのですか?

それとも、森氏の本音は「9条1項の理念を変えて」、「国際紛争を解決する手段として武力を行使する」と言う意味なのですか?

そして、「国際協調活動」とは「武力による国際協調活動」を想定しているのですか?!

 

 これでは前原氏の希求する“『読んで字のごとく』の憲法”とは程遠い憲法となります。

それに、今の時代「武力による国際協調活動」など存在しますか?!

「湾岸戦争」?「イラク侵略」?

(この件に関しては、拙文《改憲して軍隊もってどうする?》もご参照下さい。)

 

なのに何故、日本が平和憲法を捨てて「軍隊」を持つ必要が何処にあるのですか?

中国と軍隊同士の武力衝突をして、何が得られるのですか?

 

 先の拙文《自衛隊と軍隊 どっちが分かり易い?》の冒頭には次のように記述しました。

 

小泉首相は、本年(2003年)520日の参院有事法制特別委で、自衛隊について次の如く答弁した旨、朝日新聞記載されていました。

 

私は、自衛隊が我が国の平和と独立を守る軍隊であることが正々堂々と言えるように将来、憲法改正が望ましいという気持ちをもっているが、いまだにその機運には至っていない。

外国の侵略に対して戦う集団となれば、外国からみれば軍隊と見られても当然でしょう。日本では憲法上の規定がある。自衛隊を軍隊とは呼んでいない。そこが不自然だから、憲法を見直そうじやないかという議論がいま出ている。

私は実質的に自衛隊は軍隊であろうと。しかしそれを言ってはならないということは不自然だと思う。いずれ憲法でも自衛隊を軍隊と認めて、違憲だ合憲だという不毛な議論をすることなしに、日本の国を守る、日本の独立を守る戦闘組織に対して、しかるべき名誉と地位を与える時期が来ると確信している。

 

 小泉氏は“いずれ憲法でも自衛隊を軍隊と認めて、┈┈┈┈日本の国を守る、日本の独立を守る戦闘組織に対して、しかるべき名誉と地位を与える時期が来ると確信している。”は語っていますが、「自衛隊」が「自衛軍」と「隊」が「軍」と変わる事で「しかるべき名誉と地位」が与えられると言うのでしょうか?!

 

それに、「外国からみれば軍隊と見られても当然」だからと言って、外国人の観点に合わせて、自国の憲法を見直すのは、変ではありませんか?

平和憲法の第二項は、次のように記述されています。

 

前項(第一項)の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 

 従って、「自衛」ではない「自衛」は、あながち(その戦力が自衛の範囲を越すと問題ですが)憲法に反しているとは言えないのかもしれません。

否!自衛隊が違憲であっても、先の拙文《奇跡と仮城の平和憲法》にも書いたのですが、私達は、私達の国の現状では、平和国家としての国際的な評価、評判、認知度などに於いて、不足している面が多々あり、平和憲法第二項を完全に実施するには、実力不足なので、法華経に記述されている「仮城」として、当面「自衛隊」を保持していますが、平和国家として世界に認知された暁には、直ちに「自衛隊を破棄しよう」と念じ「平和憲法のもとで自衛隊を有している」のではないでしょうか?

 

 それなのに“『読んで字のごとく』の憲法”ということで、他国同様な「軍隊」を有す事が出来る憲法に変えてしまって良いのでしょうか?

 

 こんな発想(常に他国と同一歩調を取る)では、ビートタケシ氏の「赤信号みんなで渡れば怖くない」と全く変わりありません。

 次の立場のどちらに、私達日本人は誇りを持つ事が出来るのでしょうか?

 

1.)たとえ他国から、非難されようが、
いつの日か世界中から軍隊がなくなることを希望しつつ、
且つ、その礎となるべく苦しみながらでも平和憲法を守り
(或いは固執してと言われようが)、
止むを得ず「自衛隊」を保持する。

2.)「赤信号みんなで渡れば怖くない」的に改憲して「軍隊(自衛軍)」を持つ。


 

 私は、当然ながら前者(1)の立場に誇りを感じます。

 

しかし、残念なことに毎日新聞(105日)には、「毎日新聞の世論調査」が掲載されています。

 

 ◇世論調査の質問と回答◇

 ◆あなたは今の憲法を改めることに賛成ですか、反対ですか。

                           全体 男性 女性

賛成                         58 62 54

反対                         34 33 36
・・・

 ◇<「賛成」と答えた方に>どのように改めるべきだと思いますか。(三つまで)

憲法の文章が翻訳調なので、分かりやすい日本語にする  43 36 50

┈┈┈┈

◇<「賛成」と答えた方に>改正に賛成する理由は何ですか。

今の憲法が時代に合っていないから           56 55 57
・・・

┈┈┈┈

 

 半数近くの人が、憲法を変えて、「憲法の文章が翻訳調なので、分かりやすい日本語にする」との世論調査の結果は、今回の衆議院選挙の結果のように感じます。

この世に、「分かりやすい日本語」など存在するのですか?

今回問題になった、郵政民営化法案を日本人の誰もが理解できるのですか?

六法全書で、法律の問題は全て解決しますか?

裁判に於いては、法律以外に、過去の類似事件の判例が、新たな事件の判決に参考にされているではありませんか!?

 

 小説に於いても、文字面を読むだけではなく、その行間を読むのではありませんか?!

特に私達日本人の日常生活、更には、仕事の面でも、法律、契約といった文言(「分かりやすい日本語」?)よりも、お互いの気持ちを尊重してきたのではありませんか?!

 

 

 多少とも、平和憲法から逸脱していようとも、私達が誇りを持って世界に訴えるべき事は、「平和憲法の文字面」だけではなく「平和憲法の精神」ではありませんか!?

 

 更に、半数以上の方々が、「今の憲法が時代に合っていないから」憲法の改正に賛成するとの結果も、悲しい結果です。

 

 私達の『平和憲法』は「今の憲法が時代に合っていない」のではなくて、「時代を先取りしている」のです。

 

 

(補足)

 

 例の忌まわしい米国に於ける「9.11同時多発テロ」が発生しなかったら、冷戦が幕を閉じた今、私達の『平和憲法』は、「今の憲法が時代に合っていない」のではなくて、「今の時代にふさわしい憲法」であったはずです。

 

そして、この「9.11同時多発テロ」は、拙文《世界を操る大きな力》にも記述しましたが、「テロ」ではなく『事件』ではないかと思われるのです。

この「テロ」の『事件性』関しては、週刊金曜日にて成澤宗男氏が『「9.11事件の謎』と題して、記述されておられます。

次回には、この件を引用させて頂きたいと存じております。

私の見解としましては、貿易センタービルが、飛行機の衝突(それに伴う飛行機燃料の火災による鉄骨支柱の溶解)の結果、まるでダイナマイトによるビル解体工事の如く2棟とも崩壊した事が信じられません。

1棟だけなら、その偶発性も信じられなくはありませんが、2棟もあのように崩壊したと言うのでは、当時救出に向かった消防士たちが耳にした、ビル内で発生した数度の爆発音を無視する事は出来ません。

 
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